エアコンの防カビコーティング・抗菌コートって効果あるの?

 

今回は真面目な内容になります。

いや、もちろんいつも大真面目なのですけど、いつもよりも小難しい内容になります。

エアコンクリーニングのお客様からこんな質問をいただくことがあります。

Q クリーニング後に防カビコーティングをしてもらうことは出来ますか?

結論だけ申し上げますと、

A、当店はエアコンへのコーティングは実施しておりません。

となるのですが、その理由を申し上げるとこれがまた長くなります。

今までその都度ご説明していたのですが、作業も落ち着いているこの時期に文章にしてみました。

口頭で説明するのはともかく、文章にしようとするとこれがなかなか・・・

国語(作文)の授業を小学校時代からサボってきたツケですね。(^_^;)

なるべく簡潔にまとめたつもりですので、お時間ある方はお付き合い下さいませ。

【回答】

当店はエアコンへのコーティングは実施しておりません。何故なら、近年のエアコンは各メーカーとも製造時にその類のコーティングを施してあるからです。そのコーティングも、クリーニング時に施すような耐久性の低いものではありません。

以下、防汚性能が必要となる中心部品、アルミフィン(熱交換器)のコーティングについて説明します。

▶アルミフィンは冷房時に結露し、暖房時には80℃程度の高温になります。この繰り返しによって、コーティングの劣化作用が高まりますので、高い耐久性が必要です。製造時にはコーティング剤を塗布した後、180℃~280℃程の熱を加えて焼付け乾燥し、強固な皮膜を作って耐久性を高めます。

一方、クリーニング時のコーティングは自然乾燥ですから、耐久性は期待できません。一般的にはその持続期間は6ヶ月~1年程度と広告されているはずです。

また、それ以上の問題は施工方法にあります。エアコンを壁に設置したままの作業では、各部にまんべんなく塗ることは不可能なのです。工場での製造時は組み立てる前の部品単体の状態でコーティングをします。クリーニング時のサービスであったり、オプションで数千円程度のメニューでは出来ない作業なのです。

更には、エアコンは防汚性能だけを考えて作っているわけではありません。
必要な性能要素を挙げます。

①熱交換性能
エアコン本来の目的はこれです。決められた機械の大きさの中で冷やしたり、暖めたりする効率を如何に上げるか?を第一に考えています。

②耐腐食性能
部屋の空気には様々な汚れが漂っています。キッチンからの油煙、ペット臭(オシッコが蒸発した成分)、はたまたドアの開け閉めで入ってくる自動車の排気ガスなどもエアコンを腐食させる原因になります。

③親水性能
結露水が馴染んで広がる性能(撥水の逆の意味です)が高いこと。そして水切れが良いこと。アルミフィンは結露水をはじいて玉状になると不味い事態が起こります。風に乗って送風口から水が飛んでくるようになってしまいます。

エアコンメーカーでは、それぞれの性能が最適なバランスとなるように設計しています。ある性能を追求するあまり、他の性能が下がってしまっては困るのです。そのようにバランスが取れているエアコンにメーカーが想定していない物質(コーティング剤)を後から加えることを当店は良しとしません。

 

▶以上のことから、あくまでも設計通りの性能を発揮出来るようにクリーニングして(汚れを落として)、なるべく新品に近い状態に戻してあげることが大切だと考えています。

人によっては後からコーティングしても不具合が起こるほど設計バランスが狂うことはないし、耐久性は低くても、やらないよりはやった方が良いという意見を述べる業者もいます。ですが、私としてはコーティングの無料サービスをアピールして集客したり、オプションで単価アップを試みるのならば、その手間をもっとキレイにクリーニング出来る方法に費やして、お客様にアピールすべきだと主張します。

例えば、現状ではドレンパンを外さずにクリーニングしているのなら、コーティングなどしなくて良いので、その手間をドレンパンを外してクリーニングしてあげることに費やしたほうが、ずうっと快適にエアコンを使っていただけるようになります。(参考記事➡ドレンパンを外してクリーニングしたエアコンと外さずにクリーニングしたエアコンはどれくらい違うのか?見てみましょう

いやらしい話をあえて書かせていただきます。業者はドレンパンを外すことよりも、コーティングでお客様にアピールして誘い、売り上げをアップさせる方が簡単で楽なんです。時間もかからず、作業リスクも小さく、経験の少ない人間でも作業が出来て、なお且つ、何となく良さそうな印象をお客様に与えることができますからね。

ですが、中途半端なクリーニングをして、まだカビが残っているエアコンに防カビコーティングしても意味は無いのです。そんなことをしたら逆にカビを閉じ込めてしまいます。

先に申し上げたコーティング剤の耐久期間6カ月~1年というのは、カビが無い状態のエアコンにコーティングを施し、カビの胞子を付着させて経過観察した実験結果であることを付け加えさせていただきます。

実際にご家庭で使用しているエアコンでは実験結果ほどの耐久期間は期待出来ないでしょう。

何となく良さそうな印象よりも、論理的な理由でお考えいただけますと幸いです。

 

▶百聞は一見にしかず。ことわざに従い、実例です。

あるお客様、コーティングオプション付きでクリーニングを頼んだそうです。

ある大手さんの防カビチタンコーティング。オプション料金3,300円はこの状態で行います。

 

背抜きしてみるとここまでの説明の意味が分かります。【不完全分解】でのクリーニングでは、この部分のカビは落とせません。

カビだらけです。この状態でコーティング剤を吹きかけている訳です。効果などあるはずがありません。

 

アルミフィンの裏側にもカビが残ったままです。コーティングする前に成すべきことが出来ていない訳です。頼んだその年から臭くて仕方なかったとはお客様の弁。カビが落ちていなければ当然ですね。

先ほどの分解状態では、まともなコーティングなど出来るはずがありません。コーティングよりもクリーニング方法が大切ということで、今回は当社に『背抜き』のご依頼をいただきました

 

<<参考文献>>
■『防汚コーティング技術』 三菱電機技法 Vol.No.8.2009

■『プレコートアルミニウムフィン材の表面処理技術』 平澤秀公 著 2006 日本ペイント(株)ファインケミカル事業部

■『有機無機ハイブリッド超親水膜の開発』FUJIFILM RESEARCH & DEVEROPMENT (No.55-2010)

当店では三つの手法でエアコンクリーニングをご提供しております。店長坂井が一台づつ、想いを込めてクリーニングさせていただきます。ご料金など詳細は各々のページをご覧くださいませ。

プレミアムプラン背抜き完全分解クリーニング
ハイグレードプラン送風ファン分解クリーニング
スタンダードプランドレンパン分解クリーニング

 

 

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